2017年4月30日日曜日

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 ケネス・ロナーガン 2016 ★★★

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2017年アカデミー賞ノミネート作品
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最近のアカデミー賞のノミネート作品は、どれもこれも重い内容のものばかりなのか・・・と少々鬱々としながらも見終えた一作。

主人公を演じるケイシー・アフレックはベン・アフレックの弟ということもあるが、それよりも「インターステラー」で主演を演じていたのも同じ俳優だというのに驚く。重い過去を背負いながら言葉少なくも、実直に生きる中年男性を見事に演じている姿から、その高い演技力に納得せずにいられない。

物語が進むにつれ、徐々に明らかになる主人公の辛い過去。地元から離れ言葉少なく懺悔するかのように毎日を淡々と生きるその理由と、周囲の人との接触をできるだけ絶ちながらも、自らの中にある後悔に苦しみんがらあがく姿が、寒々しくも美しい北アメリカの町の風景と共に描かれる。

一人の人間の負った深い悲しみと、それが原因で人間関係も全ても失って孤独の中で生きる姿。人生に絶望しながらも、どんなに地元に戻れない理由があろうとも、家族のつながりで否応無しにコミュニティの中に引き戻され、見るのを避けてきた事柄が日常の視界に入ることで、更に過去の悲しみを突きつけられることになる。

登場する全ての俳優の演技も素晴らしく、そしてその心情を物語るような風景の撮影方法もまた美しく、映画らしい一作であるのは間違いない。そしてその内容から各映画賞で高評価を得ているのもまた納得。全編を通して流されるBGMも教会音楽のような響きで、カトリックの強いボストン郊外の街の雰囲気を感じ取ることが出来るのも、なんとも気の利いた演出をする監督だと思わずにいられない。
ケネス・ロナーガン(Kenneth Lonergan)


ケイシー・アフレック


ルーカス・ヘッジズ




ミシェル・ウィリアムズ

2017年4月24日月曜日

Central Embassy_Amanda Levete 2014 ★★


クライアントの手配によって、非常に交通の便のいいロケーションにホテルを取ってもらったので、せっかくだからと朝早くおきて、持ってきたランニングシューズに履き替えてすぐ近くの敷地を見てまわったり、かつて訪れた時にも朝走りに訪れたルンビニー公園まで足を伸ばしたりとしてみることに。

以前は無かった風景の中心となっているのがこのCentral Embassy。すっかりスクンビット通りの新たなるランドマークとして人々に受けいれられている様子である。設計は毎年訪れているAAスクールのExternal Examinerでも一緒になるアマンダ・レブト(Amanda Levete)。上層にパーク・ハイアットが入るバンコクでも最高級に位置する商業施設ということである。

その特徴的な外装は小さな二種類の折れ方をしたパネルを折り重ねていくことで、施工精度が問題として見えてくるのではなく、それを呑み込む様な方式となっているようで、全体としてゆったりとした曲面をうまく表現していながら、特徴的なスカイラインを街に作り出しているのには感心する。

地下には街でも有名な美味しいといわれる屋台を招聘し、相当高級なフードコートとして人気を博し、何度にも渡って拡張した結果、今ではフロアの端から端まで料理を選んでいるとお昼の休憩が終わってしまう、そんな規模にまで拡大しているという。

初日はクライアントに連れられてこのフードコートにてランチをし、夜には上層階に位置するかなりお洒落なフュージョン・レストランにてディナーを取るなど、すっかりバンコクの都市生活の一部として定着している模様。

ちなみに、クライアント曰く、雨の多いバンコクでは、商業施設におけるテラスはそれほど価値を見出されていなかったが、この建物の成功でその見方もかなり変わってきているという。

二日目はさすがによりローカルなものをという要望を出し、この建物の向かいの道の地元の人でごった返すマーケットの中の小さなヌードル屋さんで、お腹に優しい味の麺を美味しくいただいた。


















2017年4月23日日曜日

バンコク(Bangkok) ★★★

進行中のプロジェクトの為に、クライアントのオフィスでLDI(Local Design Institute)と一緒になってメールのやり取りでは解決しきれない課題に方向性をつけるために、スタッフ2人とともに三日間のワークショップを行うためにバンコクへ。

再開発が進むスクンビット通りに位置するクライントのオフィスと敷地。上空を走るスカイトレインとその下の濃い影の中の雑踏に足を踏み入れると、「タイに来たんだな」とそのむっとする空気に身体が反応する。

ソンクラン(Sankrandhi)と呼ばれるタイの正月でもある水かけ祭りが終わったばかりで、長い休暇から戻ってきた人々が街に溢れ、しばらくして始まる雨季までの短い夏を謳歌するように昼夜問わず人がごった返す街中。

かつては無かった高層ビルが街のスカイラインを変えつつあるこのバンコクで、少しでも今の人々の生活を感じ取るようにと期待を抱きながら、深夜の市内に向かうことにする。














「フリーライダー あなたの隣のただのり社員」 河合太介 渡部幹 2010 ★★


河合太介
なんで自分はこんなにまじめに、こんなに沢山仕事をして、こんなに長時間働いているのに報われず、それに対してあの人はまともに仕事などせず、就業時間でも遊んでいて、上司の前だけいい面して、それで仕事をがんばっている、成果をあげたと評価され、昇進していてき、給料もあがっていく。なんて不公平なんだ。

どうせ報われないのなら、自分だってがんばって仕事をする必要は無い。できるだけうまくやって、サボって時間を過ごせばいい。


仕事をせずに周囲の人に「ただのり」する社員を「フリーライダー」と呼び、なぜそういう人が発生するのか、そこにはどんなタイプがいるのか、そしてその対処法は?などを描くもの。

恐らくこういう人は規模がある一定レベルを超えた大きな会社においては、いつの時代でも必ず一定割合存在したのであろうが、かつてはもう少し社会全体、会社全体がおおらかで、そういう人にも存在理由があるんだと、「働かないアリに意義がある」のように許容する余裕があったのが、競争主義が導入され、会社全体に効率化が求められ市場で勝ち抜いていかなければならない現代においては、一人一人がフルで働かなければいけない状況が続く中、余計に「フリーライダー」が目に付くようになったのもまた事実であろう。

ただ組織側としては、どうやって「フリーライダー」の意識を発生させないか、そしてそれが伝染しないようにするのかは非常に重要な生命線であり、やはり最後は給料を得る場所としてではなく、一職業人として自分の将来にとってどのような有益なスキルを身につけることができるか。またその手段が多種多様あると思える場所にすることが、一番の解決法なのだろうと読み終えて改めて思うことになる。

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目次
第1章 ただのり社員に苛立つ職場
第2章 フリーライダーの分類―日本の職場にいる四種類のフリーライダー
第3章 なぜフリーライダーが生まれるのか
第4章 組織としての問題解決―勤勉な社員が夢を見られる会社づくり
第5章 個人として取るべき行動
第6章 新たな課題
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